今回は、西念寺の植田 誓子 (うえだ せいこ) さんにお話を伺いました。
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はじめに
今回は伊豆市、修善寺駅から少し南下した本立野地区の狩野川沿いに佇む西念寺(さいねんじ)さんを訪問してきました。本堂を建て替えるという一大事業を成し遂げられ、あわせてお寺のロゴマーク(紋)やホームページを新規に作成するなど、大々的なリニューアルを行われた西念寺さん。その様子や思いについて、本堂落成が行われたその日に副住職の植田誓子さんに伺いました。【後編】
前編はこちら↓
本堂建て替えについて
本堂建て替えの経緯について教えて下さい。
今回の建て替えは、実は12年前からきっかけが始まっているんです。最初はちょっと本堂で雨漏りがするということで屋根裏に登ってみたら、だいぶ老朽化がひどかったんです。虫食いがあったりとか板が割れていたりとか。
耐震補強という選択肢もあったんですが、それもなかなかお金がかかるのというので、もう思い切って、すぐにはできないけれど将来的に建て替えをするということで決断をして、門徒の皆様にご説明をして積立型の寄付を了承いただき、ほぼすべての門徒さんに参加いただき、資金準備がスタートしました。本当にありがたいことです。
それから実際に建てられるまでの間も色々な会議を開いて皆で話し合ったり、新しい本堂のためにアンケートをとったり、座談会を開いたり、といったことをしてきました。
どのようなコンセプトで本堂を建て替えられたのでしょうか?
西念寺はさほど大きなお寺ではなく、予算も限られているということで、門徒の皆さんとどのような本堂にするか色々な検討を行いました。その結果、いわゆる昔ながらのお寺らしい伝統建築のようなものにはこだわらず、本尊の周りのお仏具はしっかり伝統的なスタイルを取るけれど、その箱に関してはコストをできるだけ抑えて維持管理がしやすく長持ちするものにしようと、ポジティブに捉えた選択をしました。
そのようにコストパフォーマンス的なことも結構考えてきたので、建築は普通の大工さんにお願いしました。ですので、外観は正直ちょっと大きな公民館みたいになっていますね。屋根も反っていないですし、瓦だと重くて耐震性が心配で維持も大変だというのもあって、ステンレス製にしています。
もちろん中にはお寺らしい形を望まれる方もいらっしゃったんですけれども、皆さんとのお話し合いの中では結構早い段階から、そういう外観にこだわない、中身のところでしっかりお寺らしさを出そう、ということになりました。
本堂を拝見させていただきましたが、新しい設備も充実していますね。
建て替え前はアナログなプロジェクターを説明会などに使っていたんですが、今回75インチのモニターを新調して、先ほどの落慶法要(らっけいほうよう)でさっそくモニターを使用して本堂の完成までの歩みをスライドショーで見ていただき、今までとの違い、新しさを皆さんに感じてもらえたと思います。
他にもちょっとしたイベントやミニコンサートが開けるようにということを最初から考えて、スピーカーや照明も工夫しています。窓際のカウンターは、景色を眺めながらのんびり過ごしてもらったり、読書や勉強にもいい。大きいモニターで上映会やカラオケ大会もできるねと、いろいろな使い方、過ごし方をしてもらえるのではと思っています。
子ども会とか、お年寄りの集まりとか、そういうものにぜひ使っていただいて、地域とのつながりも強くして行きたいなと思っていますね。
新しい取り組み
本堂建て替えと同時にロゴマークやホームページを作成されていますね。
このロゴとホームページは修善寺にあるデザインスタジオの燕舎さんと一緒に作ったものなんです。そもそものきっかけは伊豆日日新聞に載っていた燕舎さんのオーナー、勝野さんの記事を見て、「あ、こんな方が修善寺にいるんだ。」と思い、燕舎さんにご連絡したことなんです。そうしたら勝野さんがすごく地域づくりのことを真剣に考えられていて、それで共感というか、刺激とか感動をいただいて、ぜひ一緒にやらせてくださいということになりました。
それで、地域の色々な人たちにお寺に足を運んでいただくということをしていきたいし、していかないと、という気持ちがあって、まずはまだご縁の無い方にどうやってアピールするかという事で、ロゴとかウェブサイトが欲しいよね、という話になりました。
実はロゴマーク・紋というものは、お寺の宗派のものはあるんですけど、西念寺には寺紋というものがないんです。であれば、寺紋風・家紋風のロゴが良いよねっていうことになって、もう新しく作ってしまおうという流れになったんです。新しい紋には、門徒さん以外の方も含めて地域に開かれたお寺でありたい、法事やお葬式といった仏事以外にも地域の色々な活動にお寺を使ってもらいたいという気持ちが込められています。
新しい取り組みについて、周りの方々はどのような反応でしたか?
それがすごくありがたいことで、それこそもう門徒さんの方から、「ウェブサイトとかそういうの今いるよ」、「誓子ちゃん帰ってきたし、ちょっとホームページ作ってよ。」といった雰囲気なんです。新しい事への挑戦には「どんどんやんなよ。」といった感じで、すごく応援していただけていますし、このような関係性がとてもありがたいですね。
新しい本堂でやっていきたいことなどありますか?
こんなことがやりたいなあっていうアイディアはいっぱいあるんです。例えばヨガであったり、放課後の寺子屋のようなものだったりとか、音響とか照明とかも工夫したので、ミニコンサートなんかも。あとはお庭もきれいになりましたし、ちょっと小さいんですけどロビーがあるので、そこにソファーのセットを置いて”寺カフェ”みたいにするのもいいな、なんて思ったりしてるんです。
最初は自分で全部やろうと思っていたんですけど、燕舎さんと出会ったり、地域で積極的に楽しい活動をしている方々とちょっとずつ繋がりが出てきたり、会いに行ってみたいなという人もいたりするので、お寺としては場所を提供して、「この場を使ってください」っていう感じで、自分が出て行って人脈を作って連れてくるというような形を考えています。「ここでそれ、やってもらえませんか?」といったように。
そうするとお寺に興味はなかったけれど、その内容とか人に興味がある方がきっと集まってくれて、それで「こういうお寺があるんだな」とか、「お寺って来てみると意外とちょっと楽しいな」とか「居心地いいなー」みたいな、そういう新たな人との繋がりが作られていければ嬉しいですし、それがこの地域全体の活性化というか、広がりになっていったらいいなあ、なんていう風に思っていますね。
観光客にも足を運んでいただけたら良いですね。
西念寺にはけっこうな樹齢のしだれ桜があって、花が咲くとすごく綺麗な知る人ぞ知る名所なので、その桜を見に来られる方というのは時々いらっしゃるんです。なので寺カフェで、しだれ桜を見ながらコーヒーを飲む、なんていう楽しみ方もあるかなと考えています。この辺りは田舎の良さもあって、すぐ目の前が田んぼなんですが夏は蛍も見られて、今は地元の人が楽しんでいるだけなんですけど、ちょっとPRしたら都会から来る人はきっと喜んでくれるのかな、とも思いますね。
さいごに
地域の子供たちとの繋がりといった伝統と大切にしながらも、時代の流れに適応した本堂の建設や新しい活動に取り組む西念寺さん。副住職も力強い眼差しと明朗な語り口で、お話を伺っているだけでもその高い行動力が伝わってきました。地域のお寺というものの価値観を変えてくれる、そんな期待を抱かせてくれたインタビューとなりました。
■ 会社・店舗案内
西念寺
〒410-2414 静岡県伊豆市本立野197
0558-72-0868
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