今回は、伊豆ばら園の代表 後藤 治也 (ごとう はるや) さんにお話を伺いました。
キレイで香りがとてもよい食用バラ。国内での生産は、観賞用のバラに比べて少なく、珍しいようです。
今回は河津町で、食用バラを栽培する伊豆ばら園の代表の後藤治也さんに、食用バラの生産方法やご苦労、食用バラの可能性などのお話を伺いました。
バラが食べられる?!
「食用バラ」を栽培されているとお聞きしたんですけど、どんなお花なんでしょうか。
うちでは、今、150坪くらいのハウスで「ドフトボルケ」と「ダマスクローズ」という2種類の食用バラを栽培しています。「ドフトボルケ」がメインで800株、「ダマスクローズ」は30株ですね。
「ドフトボルケ」は、香りが強いドイツのバラで、1950年代ぐらいの古いバラです。アメリカにバラの協会があって、香りの部門で賞を取って、殿堂入りしているバラなんですよ。「香りの雲」という意味らしいです。
「ダマスクローズ」も香りがいいですね。ブルガリアなど世界中で育てられていて、香水みたいな香りがします。
「食用バラ」は、どうやって食べるんですか?
ジャムに加工して販売しています。ジャムの加工は、息子がやってくれているんです。
生のままでも食べられます。旅館などでデザートとか創作和食などの料理に使われたりしていますよ。
偶然の「食用バラ」との出会い
後藤さんは、ずっと長い間、「食用バラ」を育てているんでしょうか?
「食用バラ」は、まだ始めて8年目ぐらいです。うちは、60年ぐらい前に、自分の父親の代から、観賞用のバラの生産を始めてたんです。実は、河津は切りバラの発祥の地と言われているぐらい歴史が長いんですね。発祥の地と言うと大げさかもしれませんが。
昔、大矢先生と言うすごい先生がいたんです。今でも、全国のバラの協会のなかで、「大矢賞」という賞があるぐらい、有名な方なんですけど。その大矢先生が、自分の父親がまだ若者だった頃に、アメリカで花の栽培の技術を習得して、この河津町に住みついたんですね。それで、地元の若者を集めて、花の栽培を教え込み、その中の1つがバラでした。
なので、自分も、ちょっと前まではガーデン用のバラの苗を生産していたんですけど、今はバラは「食用バラ」だけ育てています。
なぜ、「食用バラ」の栽培を始めようと思ったのでしょうか?
今、育てている「ドフトボルケ」というバラに出会ったからですかね。偶然ですけど、ガーデン用のバラの中に入ってきたんです。いろいろバラを仕入れる中でドフトボルケが入ってきて、それが香りがとてもよくて、すごくいいね!って話になって。
色も、うす赤で、最初は、ドライフラワーにしたらキレイな赤になるなーと思ったんですよ。
それで、しばらくは、売らないで少しずつストックしてたんですけど、たまたまジャムの話になって、じゃあ、やってみようかなーと思って。
何年もの試行錯誤を乗り越えて
食用バラは8年前から作り始めたとのことですが、すぐにうまくいったのでしょうか?
いやいや、失敗の繰り返しです(笑)。
スリップスという小さい虫がいて、バラの小さな花弁をかじってしまうんですね。それがなかなか退治できない。退治するには、化学農薬を使わないとダメだったんですけど、食用バラなので、化学農薬を使うのも難しくて、もうダメかな~、手がないな~と思ってたんですよ。
ある時、インターネットでいろいろ調べていたら、「野菜のきゅうりだったか何かの栽培をする人が、ヒートショックといって、夏にハウスを閉めちゃって、室温を45度から50度近くまで上げることによって、スリップスを退治している」という記事があって、それをバラでやってみたんです。
そうしたら、1回ではムリだったんだけど、2回、3回やることによって、徐々に退治できるようになったんです。他の人に相談したら「そんな高温にしたら、バラがダメになるんじゃないの?」って言われたんですけど。
ヒートショックをやるのはドキドキしませんでした?
しました、しました(笑)!失敗する時もあって、失敗するとバラの葉っぱが焼けちゃうんです。茎まで赤くなったり、茶色くなったりしちゃう。やるときは、前日に、水をたっぷりやってとかコツがあるんですね。そういうコツを少しずつ、つかんでいって、うまくできるようになったんです。
試行錯誤していたのは、8年のうちのいつ頃でしょうか?
8年のうちの、たぶん4年目ぐらいですかね。最初の1年、2年は試しに少しずつ栽培をしていたので、それもあって、けっこう時間がかかりました。
お伺いした7月下旬は、バラのシーズンではなかったのですが、ハウス内では後藤さんが丁寧に育てているバラがまだキレイに咲いていました。
「後編」では、地域との連携や、バラの可能性について、後藤さんのお話をご紹介します!!
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伊豆ばら園
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