伊豆は魚も美味しいけれど、負けず劣らず空気がうまい。ここでは「空気の刺身」が味わえます。このご時世、何よりの御馳走かもしれません。前日までの予報が見事に外れ、気持ちよく晴れた朝。雨上がり、澄んだ空を見ていたらいても立ってもいられなくなり。。。
修善寺駅近くには自転車を貸してくれる施設がいくつかあります。この日は南口にあるサイクルステーション「いずベロ」(izu velo)を訪ねてみました。駅から0分。改札ホールの観光案内所前に置かれた展示自転車と案内板があるのですぐわかります。
朝一番で店内を覗くと代表の後藤さんと松本さんが笑顔で迎えてくれました。ここは伊豆市の観光振興策の一環で,里山での様々なアクティビティへの参加促進のためのNPO法人として運営しているサイクルステーション。各種自転車を1時間500円~1日2000円でレンタルできます。
いずベロの代表の後藤さん(右奥)と松本さん(中央)。壁にはこの付近のスポット情報がぎっしり。
後藤さんも松本さんもこの土地に長く住み、自転車にも地域のことにも大変詳しいベテラン。行先を相談したら,周辺のおすすめのスポットと用途に応じた自転車を丁寧に教えてくれました。「その近くにいくなら○○も見に行くといいよ~」「あの道は舗装が悪いからやめた方がいい」「あの先はコンビニもないから水を忘れずに」など覚えきれないほどのアドバイスをもらった後,自転車の説明を受けて外に繰り出します。
天城越えのてっぺん、旧天城トンネルまで行ってきました。総走行距離は約60キロ。
この日借りたのは電動アシストのついたヤマハのクロスバイク。フル充電すれば70キロも走れるスグレモノです。坂の多い(というより坂ばかりの)修善寺の道ですが,でもアシストがあれば非力な人でも高原の風を感じながら楽々と移動できます。背中を押してくれるモーターと全身で感じる風の感覚。うん,楽しい。
その日の気分で修禅寺近辺の路地めぐりや、狩野川沿い,ジオパークなどパワースポット,その気になれば天城峠等の比較的遠いところも平気。里山の緑と空気に包まれて爽やかな気分を味わえます。
貸切の道を森林浴しながら走る。スマホホルダー+地図ソフトがあれば道に迷うこともない。
でも自転車もスマホもバッテリーの残量には注意が必要。スマホの充電器は持っていきたい。
筏場のわさび田。国士峠を超えて。
湯ヶ島方面へ南に進路をとると狩野川に沿っていくつもの丘が重なっています。ひだまりの田園風景はほぼ貸し切り。自転車で移動している限りは人との密な接触もありません。自然のまん中でマスクを外して深呼吸すれば思いっきり空気の御馳走を満喫することができます。至福の時。
浄蓮の滝すぐ近くのカフェPikinikiさん(https://www.pikinikicafe.com))で一休み。。芝生の上で淹れたてコーヒーをいただけます。
というわけで 気の向くままにペダルを踏み、一日たっぷりと楽しませてもらいました。
帰りによった牧之郷にあるヴィーガンカフェ、tutty cafeさんにて。(https://tuttycafe.jimdofree.com/)
民家風、というより農家の縁側そのもの♪ このあと、修禅寺向かいの筥湯さんで汗を流して楽しい一日を終えました。
やっぱり伊豆&自転車はサイコー!
実はこの能天気なエッセイはこれで終わるはずだった,,,でも,この一日サイクリングで,いやでも考えさせられることがありました。それは土地の人の「感情」と「観光」についてです。
その日の修善寺は平日にもかかわらず多くの県外からの車や観光客が訪れていました。
自転車で温泉街を流していたら,道いっぱいに闊歩する湯治客や、大声で笑いながら食べ歩きをする若い人,中にはマスクを外して店の人に話かけている観光客もいました。このコロナ禍困った人もいるものだと地元の方と話していたら,こんなことを教えてくれました。
伊豆を含む静岡県は今のところCOVID-19の発生が比較的少なくてすんでいます。そのことは裏返しに土地の人々に「今後外からウイルスがやって来やしないか」という強い警戒感を生んでいるそうです。伊豆は土地柄もあり,昔から地元愛が強い人が多いけれど,時にそれは排他的な感情にもつながります。こんなことから,地元ではコロナ禍でもやってくる県外からの観光客には本当は来て欲しくないと思っている人は決して少なくないそうです。また、1年延びたオリンピックについても,伊豆で自転車競技が開催されることで,大勢の外国人とメディアが自分たちの土地に押し寄せることについて否定的な感情を有している人も多いと言います。
無理もないと思います。それは私たちが日本に着いたばかりの重感染国から来た(と思われる)外国の人々を見たとき,無意識に感じてしまう警戒感と同様のものかもしれません。
一方で、人口減少と高齢化の進む伊豆にとって観光業と関連産業の盛衰はまさに死活問題です。温泉旅館も土産物店も外からの観光客が途絶えれば自滅してしまいます。伊豆も静岡県民に来訪してもらうことで経済をなんとか回そうとしているけれど、自ずと限度があることは明らかです。行政でも不要不急の外出を控えるよう呼びかけながら、市の観光案内所はいつも通りに開いているし,温泉旅館組合や景勝地は警戒下にあってもあの手この手のプロモーションを続けています。これはこの問題の矛盾をよく表している現象といってよいでしょう。「来て欲しくない」と思う人の感情と「来て貰わねば」という側の論理。両者の溝を埋めることが容易ならざることをあらためて気づかされました。
そうした人々の狭間で,伊豆を愛する私たちにできることはなんだろう?いつ収束するのか先の見えない状況の中で,今後どうなるかまだ誰にもわからない。わからないけれど、せめて色々な気持ちを持った人々がこの土地にいるということには心を寄せていたい。私たちが,どんな楽しみ方や過ごし方をするにしてもこのことは忘れずに,そしてなしうれば伊豆を訪れる人も迎える人もまたみんなが笑顔で過ごせるような日が早く帰ってくることを祈りたいと思います。
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