今回は、さとう温泉メロンの佐藤 晴史 さんにお話を伺いました。
静岡県は、温室メロンの出荷量、全国1位を誇ります。
そんな静岡メロンの温室栽培の礎となった下賀茂温泉メロン。
今回は、南伊豆で最後の1軒となったメロン農家 佐藤さんのインタビューの後編です。
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温泉メロンの育て方
佐藤さんに温室ハウスを案内いただくと、立派なメロンが宙に浮いています。地べたにゴロンと転がっているイメージを持っていたのでびっくり。温室内のメロンは、一本の木から一玉を収穫。全栄養を一玉に凝縮させ、糖度の高いメロンに育てます。品質管理を徹底し、苗を植えてから3か月程度で収穫されます。
(生産工程の詳細は、佐藤さんのホームページをご覧ください)
http://www.minami-izu.net/melon/main/seisan/index.htm
佐藤さんは、メロンをおいしく育てるには「メロンの気持ちになることだよ」と語ります。
その真意は、温室栽培とはいえ、メロンが気持ちよく成長できる環境を整えること。年中、暖かければよい、というわけではなく、ある程度の寒暖差も大事。毎日、天気も違えば気温も違います。温度でいえば、昼間は30度ぐらい、夜は26度ぐらい、朝方は20度ちょっと、といった感じで、室内の暖房やハウス内の窓を開けたり、閉めたりしてうまく調整します。
南伊豆に降りそそぐ太陽の光と、佐藤さんのメロンにそそぐ愛情が甘くておいしいメロンをつくりだします。
マスクメロンの網目模様
ちょっとここで脱線です。
メロンといえば、きれいな網目模様が走っていますよね。あのマスクメロンの網目ですが、市場ではメロンの品質を評価するための重要な指標となっているそうです。
もちろん、網目模様が細かく均一に入っていれば、フランスのレースのような感じで「美しい」と誰もが心を動かされます。
しかし、あの網目模様が市場で注目されている理由は、審美的な理由だけではないのです。
メロンがかつむりのように生まれつき網目模様が入っていると思ったら大間違いです。メロンの実の産まれたては、表面がつるつるで網目模様はありません。
ここからどうやって網目模様が入っていくのか気になりませんか?
実は網目模様はメロンが成長する際に徐々に作られていくものなのです。
メロンは受粉後2週間経つと表皮が急に固くなり、表面に柔軟性がなくなります。この硬化期に入っても内側の果肉は成長を続け、内側から膨張していきます。すると固くなった表面が内側の膨張圧に耐え切れずヒビが入ります。そのヒビを修復するように白い網目状のもので覆われていくそうです。
ちなみに、この修復する材は滑りんという物質で、コルクの主要な構成成分のひとつなのだそう。そのため、メロンの網目模様は「コルク細胞」とも呼ばれているそうです。
個人的には、メロンの網目は人間でいうかさぶたのようなものだと理解しています。
小さなメロンが硬化期を迎え、内側の果肉を徐々に成長させていくことできれいな細かい網目が均一に入っていきます。
窓をこまめに開閉し、室内の温度を細かく調整したり、メロンを宙づりにして育てるのは、メロンが急激に大きくなって割れてしまったり、いびつな形にならないように配慮しているからです。
市場で網目が注目されるのは、審美的な問題だけではなく、きちんと品質管理されてきたか?(手間暇かけてもらったか?)を見ているのです。
網目が均一で細かいメロンはゆっくり大きくなるため、見た目が美しいだけでなく、甘みや香りも芳醇に育っていきます。
南伊豆地域のブランド品
佐藤さんにインタビューをしているとお客さんが入ってきました
「メロンが今ごろ(1月)、取れるんですね。」
「うちは温室だから、1年中だよ」
佐藤さんの軽快なトークがはずみます。お客さんは、南伊豆に旅行に来て購入し、ファンになって、あとはメールやFAXで注文する人が多いようです。一年中おいしく食べられるメロンは、お歳暮やお中元など贈答品としても喜ばれます。
佐藤さんのメロンを求めて、これまでにも都内の有名ホテルの喫茶店や料亭、なかには料理長自ら買い付けにくることもありました。
悩ましいのは、6棟の温室ハウスで栽培できるメロンの数に限りがあること。市場には出回らないため、佐藤さんのお店でしか購入できません。実は、このメロンを心待ちにしているのは、お客さんだけでなく、地元の事業者さんも同じ。メロンの入荷を、首を長くして待っています。
佐藤さんの温泉メロンは、南伊豆ブランド認定品の一つ。南伊豆ではこのメロンを使ったスイーツやお菓子が有名です。例えば、農水産物直売所 湯の花さんの「メロンソフト」や扇屋製菓さんの「メロンパフェ」をはじめとした各種スイーツ。そして、昭和30年頃から愛され続ける南伊豆名産の「メロン最中」にも使われています。
南伊豆の地域にとって、佐藤さんの温室メロンは、なくてはならない特産品の源泉であり続けています。
実は温泉メロンは、自然エネルギーの温泉を熱源に栽培する、地球環境にやさしいエコなメロン。「SDGsなメロン」としても今後、注目されるはずです。
さとう温泉メロンさんは、メールやFAXによる注文も受け付けていますが、ぜひ温室ハウスが並ぶ、南伊豆のお店に立ち寄りいただくことをオススメします。
■ 会社・店舗案内
さとう温泉メロン
自家温泉による温室栽培で年間を通して安定した糖度の高い温室メロンを日本全国の皆様に南伊豆よりお届けします。
静岡県賀茂郡南伊豆町加納 646
http://www.minami-izu.net/melon/main/
0558-62-3978