花火が打ち上がる度に拍手と歓声が響き渡る。場内アナウンスで、大手のスポンサー名が読み上げられ、素晴らしく壮大な花火が冬の夜空に開く。海岸に降りて観ていた僕達は大いに楽しんだ。熱海では夏場に限らず、一年を通して何度か花火大会があるらしい。
火花 又吉直樹
又吉直樹氏が書いた「火花」の冒頭の舞台は熱海の花火大会である。熱海の花火大会で出会った芸人の先輩、後輩が物語を駆けて抜けてゆき、物語の最後の場面で再び熱海の花火大会にたどり着く。
いわゆる熱海の花火大会にサンドイッチされた物語である。
私は本を読むのは好きだが、物語やその構成などについて考察することは苦手なので、どうしてこの物語の舞台のはじまりとおわりが熱海の花火大会なのかはわからない。
熱海以外の場所で暮らす人々にとっては、「熱海の花火大会」とは何かのメタファーになるのかもしれない。
小説に出てくる通り、熱海の花火大会は年中行われている。
ちなみに令和3年度に予定されている花火大会は次の通り。
■熱海海上花火大会
令和3年12月25日(土曜日)
令和4年1月9日(日曜日)、15日(土曜日)
※開催時間は、午後8時20分から午後8時40分までを予定しております。
熱海市 ホームページ https://www.city.atami.lg.jp/event/1009037/1001205.html
熱海は山が海を囲み、自然との距離が近い地形である。そこに人間が生み出した物の中では傑出した壮大さと美しさを持つ花火である。このような万事整った環境になぜ僕達は呼ばれたのだろうかと、根源的な疑問が頭をもたげる。
火花 又吉直樹
小説の中で熱海と花火はこのように表現されている。
熱海海上花火大会の会場となる熱海湾では三方を山が囲み、花火が上がると山々に音が反響する。その反響する様はまるで巨大なドームにいるような感じで、花火を見ている観客に一体感をもたらす。20分間に3,000発と通常の花火大会よりコンパクトであるが、クライマックスには「大空中ナイアガラ」も流れる。
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診断士的に考えてみると、60分間で12,000発を1回開催の花火大会と20分間で3,000発を4回開催の花火大会では、どちらがどれだけ集客における費用対効果が高いのか気になるところである。
きっと熱海は首都圏から近いため、「旅行に来たら突然の花火!ラッキー!」的な位置づけの20分間・3,000発プランが合っているのだろう。きっと市役所とか商工会議所とかそこら辺の方々が長年の経験から導き出した最適解なのだ。
近隣の私のような住民にとっても、20分間・3,000発プランは手ごろでよい。「今日、花火だから熱海の温泉に行ってみようかな」となる。
首都圏の人が気合を入れて花火だけを見に行くような花火大会であれば、開催側ももっと気合を入れなければなるまい。
ちなみに日本三大花火大会は、大曲の花火(秋田県大仙市)、土浦全国花火競技大会(茨城県土浦市)、長岡まつり大花火大会(新潟県長岡市)であるそうだ。これらの花火大会では、60分間・12,000発プランどころではない規模で行われている。
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全国花火競技大会「大曲の花火」 一般社団法人大仙市観光物産協会ホームページより
このようなスペクタクルな花火大会では、小説「火花」の舞台としてはあまり味が出なかったのかもしれない。そういわれてみると、熱海の20分間・3,000発プランはしみじみとした小説のはじまりとおわりにちょうどいいプランに思えてくる。
そんなしみじみとした、そこはかとない、山々のこだまする熱海の花火大会に行ってみたいな、と思ったあなた。
熱海の花火大会はコロナ対策もばっちりなのである。
そして、加えて申し上げたいことは、伊豆半島では年中花火大会が行われている。
でもなんとなく思うのは、これらのスケジュールを調べずに、なんとなく訪れた伊豆で「どっきり花火」を味わってほしいのである。
だってそれが伊豆半島が年中花火をお見舞いしている理由であるような気がしているからだ。「旅先でであった思いもよらない花火」これに一番適しているのは、20分間・3,000発の花火プランであることは間違いない。
だから我々伊豆半島では夏に囚われず、一年中サプライズ花火で観光客のみなさまをお待ちしているのである。(憶測)