10月25日、秋の深まりを感じる夕刻、修善寺温泉「most8092」にて読書会を開催。
この読書会は、伊豆文士村とコトコト企画室のメンバーで企画したもの。
文学と温泉をテーマにしたフリーペーパー「湯文好日」も秋号が発刊され、ますます文学の秋が盛り上がる伊豆修善寺温泉です。
「伊豆文士村」は、伊豆市・伊豆半島の文学をより広く・深く知ってもらうため発足され、梶井基次郎顕彰の会「湯ヶ島檸檬忌」などを開催している団体です。
そんな伊豆文士村さんと共催する読書会の第一回目の課題図書は、もちろん、梶井基次郎の『檸檬』です。
梶井を愛してやまない伊豆文士村のメンバーさんにファシリテートしていただきながら、秋の夜長を楽しみました。
Contents
梶井基次郎と伊豆
梶井基次郎が滞在し、執筆を行った宿として知られているのは湯ヶ島温泉の「湯川屋」です。
伊豆文士村では、梶井が病気療養の為1年半近く逗留した湯ケ島温泉の宿・湯川屋(現在は廃業)のご主人・故 安藤公夫さんが執筆された『梶井基次郎と湯ヶ島』という本を発行しています。
この本には、同時期に湯ヶ島温泉の「湯本館」で執筆をしていた川端康成との交流の様子などが記録されており、梶井基次郎の人生の中でも最も幸福であったとされる伊豆の療養の様子をうかがい知ることができます。
読書会では、檸檬の文庫本の最後に掲載されていた年表を見ながら、梶井基次郎と伊豆の関わり合いについて思いを巡らせました。
こうしてあらためて文人の足跡をたどってみると、いかに伊豆が文人に愛されていたかが分かります。
その地で、『湯文好日』を発行すること、読書会を開催することに、なぞの使命感のようなものをみなぎらせ、やる気を新たにしました!
主人公が魅了された「八百卯」
『檸檬』の中で主人公が檸檬を手に入れるのは八百卯という青果店。
作中では、
・その果物屋は私の知っていた範囲で最も好きな店であった。
・果物はかなり勾配の急な台の上に並べてあって
・また其処の家の美しいのは夜だった。
・その家の打ち出した廂が目深に冠った帽子の廂のよう
・店頭に点けられた幾つもの電燈が驟雨のように浴びせかける絢爛
(梶井基次郎 『檸檬』本文より)
など、文才爆発の文章で表現されています。
作品の重要な役割を担う果物店「八百卯」は京都市中京区寺町通に実際にあった果物店だそう。
2009年に閉店し、130年の歴史に幕を下ろしたそうです。
京都の丸善
さて、八百卯で檸檬を手に入れた主人公は、京都の丸善へ入ります。
えたいの知れない不吉な塊に心を圧えつけられてからの、檸檬を購入しその冷たさや香りに高揚してからの、画本があまりに重くて憂鬱になり、画本で幻想的な城のようなものを構築して軽やかな昂奮状態となり、そして第二のアイディアが思い浮かんでぎょっとし、変にくすぐったい気持ちに微笑んでしまう。
ジェットコースターのような心のアップダウンに、読んでいるだけでこちらもしんどくなります。
(ここからはネタバレになります)
作品のクライマックスでは、主人公が積み上げた本の上に檸檬を置いて丸善を出ます。
小説の舞台となった京都の丸善では、小説のようにレモンを本棚に置いていく人が続出しているそう。
それならば、とレモンを置くかごを設置し、「レモン置き場」を作ったそうです。
おわりに
伊豆文士村の方に、作品の魅力や湯川屋、八百卯、丸善など実際にある場所の現在の様子などをおもしろくご紹介いただきました。
愛のあるプレゼンに、難解な作品がぐっと身近に感じられました。
今回は、まくら文庫として、『檸檬』と書き下ろし『びいどろ玉』を掲載した冊子を作り、参加者のみなさんにお配りさせていただきました。
梶井基次郎の『檸檬』は著作権切れ作品となり、青空文庫で気軽に読むことが出来ます。
次回は、11月22日にITJベースでの開催を予定しています。
詳細、決まり次第、追ってご案内いたします。文学が好きでも、苦手でも、だれでも参加歓迎です!
みなさんのご参加を心よりお待ちしております。
素晴らしいブログありがとうございます。
梶井基次郎のファンです。遠方ですが、いつか参加してみたいです。