今回は、さとう温泉メロンの佐藤 晴史 さんにお話を伺いました。
「温泉で育てられるメロン!?」と聞くだけで、メロン好きには好奇心がくすぐられます。
伊豆は最南端「南伊豆」の下賀茂温泉。温泉を活用した栽培ですくすく育ったメロンがこちら。
静岡県は、出荷量が全国8位のメロンの産地。特に温室メロンに限ると全国1位の出荷量を誇ります。
今回は、温室栽培のなかでもめずらしい、『温泉の熱』を活用した栽培を行っているメロン農家 佐藤さんに話をうかがいました。
あま~い温泉メロン
佐藤さんは、この下賀茂温泉で温泉メロン畑を一代で築きあげた方。20歳から丹精込めてメロンを育てて40年。
糖度14度以上の甘いメロンを作り続けています。
佐藤さんのメロンはひと口食べると、口いっぱいにジューシーな甘さが広がります。
メロンの香りと果肉のやわらかさも魅力。なんといっても、温室栽培だからこそ、この贅沢なメロンを一年中、味わえるのがうれしいですね。
「せっかくおいしいメロンを買っても食べごろがわからない?」というご心配も無用。
佐藤さんのメロンは、品質管理がしっかりされているので、収穫して1週間から10日ぐらいがちょうど食べごろ。
親切にメロンの箱に食べごろの日付が印字されています。
下賀茂温泉の歴史
この下賀茂温泉の温泉メロンの歴史は古く、さかのぼること大正時代。
大正14年(1925年)アールス・フェイボリット(品種、マスクメロンの正式名称)が輸入されると急速にメロン栽培が広がりを見せます。
すると各地から下賀茂へ視察や研究者が訪れるようになりました。
中には下賀茂温泉の「福田屋旅館」に逗留し、技術を習得していった方々も多くいたそうです。
その中でも最も熱心だった遠州の中泉農学校が下賀茂の栽培技術を磐田に持ち帰り、静岡メロンの礎となったのだそうです。
静岡が温室栽培のメロンでダントツ1位の地位を築いているのも大正時代からの技術の蓄積なんですね。
そう思うと感慨深く、誇らしい気持ちになります。
大正末から昭和にかけては、下賀茂温泉メロンは絶頂期を迎え、大正天皇や昭和天皇の御召用として度々拝命を受けるようになります。
戦時中には下賀茂温泉メロンの祖である瑞豊園は閉園するも、メロン栽培と花栽培は下の世代へ受け継がれ、メロン栽培、花栽培の農家は増加してきます。
なんと、南伊豆で無料の植物園を開放している下賀茂熱帯植物園さんも以前は4棟の温室でメロン栽培をしていたそうです。
歴史を知ると、見方も変わるし、ありがたさも倍増しますね。
日射量や温泉などの天然資源に恵まれた下賀茂温泉ではその後もメロン農家が増え続け、最盛期には15軒程度のビニールハウス園芸家が活躍する隆盛期を迎えます。
しかし、度重なる洪水災害により、だんだんとメロン農家の数も減少していきます。
温室や温泉を引く管など設備投資が高額になるメロン農家は、一旦設備が被害を被ると立て直すのも大変なのです。
現在は「さとう温泉メロン」さん1軒だけが、マスクメロン専門で元祖の火を消さずに温泉メロンのブランドを守っています。
(下賀茂温泉の温泉メロンの歴史は、佐藤さんのホームページをご覧ください)
http://www.minami-izu.net/melon/main/tokuchou/index.htm
温泉メロンの由縁
「温泉メロンって、どんなメロン?」
最初に聞いたときから気になっていましたが、今回、お聞きして温泉メロンの謎が解けました。
のどかな下賀茂の地域には昔から、多くの場所に温泉の源泉があります。佐藤さんの敷地もその一つで、温泉の源泉は100度近く。この温泉の源泉で水を温めて、そのお湯を温室ハウス内に配置したパイプに流します。ハウス内をよく見ると、メロンの苗の横にパイプが敷き詰められているのがわかります。このパイプを通じてハウス内が一年中、温められ、メロンがすくすくと育っていきます。(温泉水を直接、メロンに与えているわけではないんです)
ちなみに下賀茂の温泉は、潮が強い温泉(塩化物泉)のため、温泉を直接、パイプに通してしまうとパイプがすぐに傷んでしまいます。
静岡メロンの礎となった下賀茂温泉メロン。
その元祖の火を灯し続ける佐藤さんのチャレンジ。
後編では、実際のメロンの栽培や地元での活用などにフォーカスしていきます。
■ 会社・店舗案内
さとう温泉メロン
自家温泉による温室栽培で年間を通して安定した糖度の高い温室メロンを日本全国の皆様に南伊豆よりお届けします。
静岡県賀茂郡南伊豆町加納 646
http://www.minami-izu.net/melon/main/
0558-62-3978