今回は、伊豆ばら園の代表 後藤 治也 (ごとう はるや) さんにお話を伺いました。
前回に続き、河津町で食用バラを栽培する、伊豆ばら園の代表の後藤治也さんへのインタビュー。後編では、地域での連携や、食用バラの生産に対する想いなどをお聞きしました。
地域の「馬糞たい肥」の開発に協力
「食用バラ」は、普段はどういう管理をしてるんでしょうか?
食用に使える消毒薬があって、それをよく使ってます。あとは、最近、使い始めたのが「馬糞たい肥」です。日本では「牛糞たい肥」が一般的で、「馬糞たい肥」はなかなか手に入らないんですけど。
どうやって手に入れてるんですか?
近くに乗馬クラブがあって、糞を商品化したいという話があったんです。実は、馬糞たい肥は、昔からバラに効くと言われていて。ホントかウソかわからないけど、フランスではバラにあげるたい肥は、馬糞たい肥に決まっているって聞いたこともあります。
乗馬クラブの方から、実際のバラで実験したいと頼まれたので、1年前ぐらいから使ってみて、バラの調子がいいよーなどの感想を伝えていました。その馬糞たい肥が商品化されたので、今はそれを使っています。
開発に協力されたんですね!ところで、馬糞たい肥でバラの成長が変わるんでしょうか?
変わります、変わります!じわじわと土が良くなるし、葉っぱの色も良くなる。花も大きくなりますね。
街のお花屋さん的な存在
後藤さんは、食用バラの栽培以外に、お花の販売もされていると聞いたのですが
はい。ハウスに直売所を併設していて、切り花を仕入れて販売もしています。旅館の生け込みとか、フラワーアレンジメントとかもします。
いろいろされるんですね。
もともと大学で花の勉強をして、その後、東京の六本木にある老舗の花屋さんで、数年間、勉強というか修行したんです。結婚式の仕事とかもしましたね。なので、フラワーアレンジメントとか花束とかは、ひととおりできます。
その後、河津に戻ってきて、「花を生産しながら売りたい!」と思って、ここに直売所を作りました。昔は、フラワーアレンジメントの教室とかもけっこうやってましたよ。
今もやっているんですか?
教室は、今は息子がちょこっとやってます。息子とバッティングするといやなんで、手を引きました(笑)
※息子さんの後藤清也さんはフラワーアーティストとして活躍中
直売所でフラワーアレンジメントを買うお客さんには、自分が作ってますよ。
近所の花屋さんみたいな存在ですね。
そういうことです。河津町には、あんまりお花屋さんがないので。
食べることに花が近づくことで、世界が広がった!
後藤さんは、バラ以外にも何か生産されているんですか?
ここから500m~600m離れたところにハウスがあって、そこで、5~6年ぐらい前からわさびの苗をつくっています。天城のわさび産地から「苗を作ってほしい」と言う依頼を受けたので。一般的に、わさびの苗づくりとわさびの栽培は分業制になっていて、苗は委託するのが普通らしいですよ。
わさびの苗も作られているとのことでしたが、後藤さんの中で「お花」と「野菜」は違いはありますか?
実は、以前は、「野菜なんか作ってられない、花の人間なんだよ」とか思ってたんですよね。でも、わさびを作ってみて、自分が野菜に近づいていって、バラも食用バラということで、両方がつながったんです。
わさびをやったことで食用バラ?
順番は逆。だけど、食用バラをやることで、野菜というものが近くなった。
花って食べるイメージがなかったんだけど、野菜とつながることで、食べるってことが華やかになった。そういうイメージができてきた。
サラダにスミレを飾ったりするのは、なんか邪魔だなーって思ってたんだけど、そうじゃないなーって思ったりします(笑)
花の世界も「食べる」が近くなったことで、なんか広がるんじゃないかなーって思ってます。
食用バラをたくさんの皆さんに届けたい!
今後やりたいことなどはありますか?
食用バラをもっとたくさん生産したいですね。
息子がジャムの加工や営業をやってくれていて、静岡県内でも取り扱って下さる高級旅館さんとかも増えてきました。定期的に注文をいただくようになってきたので、業務用の大きな瓶に入れて卸すようにしています。
あと、今、いろいろ試行錯誤しながら、ジャム以外の加工商品の開発も考えています。
生のままでも需要があるんですけど、生のままだと、流通が大変なので、ドライにして、需要にあわせて出荷することができればいいなーと思って。食用バラをドライにしてお茶にしたりとか、塩と混ぜてローズソルトにしたりとか。まだ検討段階で、作ってはやり直し、作ってはやり直しの状況なんですけど。
息子と手を組んで、息子に営業を頑張ってもらって、自分は食用バラをもっとたくさん作る、というのが、今やりたいことです。
試行錯誤なので、めげそうな時もあるんですけど、育てることは楽しい!花のことしかやってこなかったからね。大変だけど、おもしろい!
インタビュー中、終始穏やかな表情の後藤さん。バラの栽培が大好きで、楽しみながら大事に育てられている様子が、とても伝わってきました。新しい取組みも考えられていて、食用バラの様々な可能性が広がっていきそうだなあと、お話を伺いながらワクワクしました!!
■ 会社・店舗案内
伊豆ばら園
〒413-0505 静岡県賀茂郡河津町沢田70
https://izu-rose.net/
0558-32-2756