8月7日(日)、「子商プロジェクト」の一環で、地域の子どもたちが店主を勤めるポップアップストアが、修善寺温泉街に1日限定でオープンしました。
企画の背景や、出店に至るまでの子どもたちの取り組みを紹介します。
子商いプロジェクトとは
子商いプロジェクトは、地域の子どもたちを対象とした、商いを通してお金と社会について学ぶワークショップ企画です。天城で「滝尻わさび園」を営む、浅田恵子さんが主催しています。
私(勝野)は、企画段階のサポート、講師として関わらせていただきました。
プロジェクトのはじまり
現在小学1年生と4年生の子どもの親である浅田さん。この企画を立ち上げた背景には、子育てをする中で、浅田さん自身が感じた課題がありました。
生きて行く上で、お金とは斬ってもきれない関係にある私たち。しかし、子どもたちが社会に出るまでに、お金(経済金融社会構造)を学ぶ機会があまりにも少ない。
そこで、子どもたちを対象に、お金について学べるような場を地域につくりたいと考え、目をつけたのが「小さな商い」。
商品の仕入れから値段付け、販売まで一貫して取り組み、「小さな商い」をすることで、意思決定能力やアントレナーシップ(起業家的行動能力)を養うことができるのではないだろうか。そう思ったのがきっかけだったとのことです。
また、就業者の9割が会社員・公務員で占められている日本では、もしかしたら大人たちにとっても「小さな商い」の経験は学びあるものになるのではないか。このような思いから、親子で参加ができるプロジェクト「子商いプロジェクトat修善寺」が始まりました。
お店オープンまでの軌跡
今回は、「滝尻わさび園」と、修善寺のお茶屋産「荘康園」から商品の仕入れをすることにしました。
参加者は、浅田さんの2人のお子さんを合わせた小学生4名と、その親御さんの合計5名。
まずは知ることから
出店に向け、まずは、地域の事業者に話を聞いて地場産品を知ることから始めました。今回は、主催の浅田さんの「滝尻わさび園」と、修善寺のお茶屋産「荘康園」へと足を運びました。産業の成り立ちや、現場の様子、商品の魅力やその活かし方を色々と聞いていきます。
商品の値段を決めていく
仕入値と売値はどのように関係するのか。商品をどんな人に売りたいか、その人たちはどのくらいの値段だったら買ってくれそうか。原価の構成と原価計算など、お金について広く学び、売値を決めていきました。
見せ方・売り方を学ぶ
どのようにすれば商品の良さが伝わるのか、見せ方・売り方を学び、ポップやプライスカードを作ります。アイディアスケッチと、下書き、アドバイスを受けての修正を繰り返していく様子はまさにデザイナーの作業そのもの。
お客さんを引きつけるためにと子どもたちが発案した、値引き券の当たる「わさびくじ」。
売り上げの見込み額や仕入値の関係から値引額を決めたり。お客さんの立場になって、どのくらいの値引額だったら嬉しいか、どんなくじ券、どんな箱だったらワクワクするか。少しのアドバイスからどんどんアイディアを出していて、とても感心しました。
いざ、オープン!
販売場所は、修善寺温泉街のレンタルスペース「most8092」にて。前日に販売ブースの設営もして、準備は万端!
出店日は、快晴で人通りも多い一日となりました。オープンしてすぐに、向かいのお店屋さんの方々が買いに来てくれました。最初は緊張した面持ちでお客さんに接していましたが、時間が経つにつれて徐々に慣れてきた様子。
声かけの内容も、アドバイスを受けて、「いらっしゃいませ!」から、販売しているものがわかりやすように「伊豆でつくったワサビを売っています!」に変えたり。営業時間の終わりが近づくと「あと〇分までの限定販売です!」とお客さんに関心を持ってもらえるようにと、工夫をしていました。
売るための仕組みづくりからツールまで、色々と工夫を凝らした、素敵なお店をつくりあげることができました。その甲斐あってか、売り上げも好調だったようです。
準備と片付けを含む5時間の労働を終えた子どもたちは、売り上げたお金でボーリングに行くー!と、楽しそうに帰っていきました。
今後について
今回は試験的な開催を終え、その価値を実感したのと同時に、見えてきた課題も多くありました。次回開催に向けて、プログラムの内容をさらに磨き、スポンサー企業や協賛金の募集も呼びかけながら、継続して開催をしていきたいとのこと。
もし身近に興味のありそうな方がいましたら、こんな企画があるらしいよと、ぜひお伝えください!
※次回の開催時期は、現時点(2022年8月7日)では未定です。
おわりに
インプットからアウトプットまで一貫して体験することで、学びの多い充実した時間を過ごしてくれたのではないかなと思います。地元で過ごす夏休みの楽しかった経験として、記憶に残ってくれると嬉しいです。
浅田さんと一緒に企画を考える中で、「いかに持続性を確立するか」という話題が頻繁に出ました。回数を重ねて徐々に良くしていきたい、より多くの子どもたちに機会を与えたい。そう思っていても、運営する各個人への負担が大きいと、やはり仕事や生活との兼ね合いが難しい。
お金はなんとかなったとしても、動ける人がいなければ企画の運営はどうしても立ち行かなくなっていきます。地域住民発のイベント等の企画では常に付き纏う、この大きな課題。ここを解決するための仕組みづくりを、丁寧にしていく必要性を改めて強く感じました。
滝尻わさび園
伊豆半島の真ん中、伊豆市天城湯ヶ島でわさびを栽培しています。我が家のわさび田は「浄蓮の滝」のすぐ下にあり、天城の山々に囲まれ、豊富な湧き水で真妻種のわさびを中心に栽培しています。天城で育った良質なわさびの味と、わさびが育つ豊かな自然をぜひ感じていただけたら嬉しいです。
〒410-3206 静岡県伊豆市湯ケ島747
https://takijiriwasabi.jimdofree.com/
0558-85-0112