今回は、飴元 菊水の荻田 真理子 (おぎた まりこ) さんにお話を伺いました。
前回に続き、手作りの飴を西伊豆で心を込めて作り続ける「飴元 菊水」の代表 荻田 真理子さんへのインタビュー。後編では、お客様からの声や、伝統の和菓子を復活させた新たな取組などをお聞きしました。
お客様との出会いは、毎日がものがたり
お客様に人気の商品は
人気の飴は、やっぱり「あまてる」でしょうか。看板商品は「らっきょう飴」。父親の頃からの商品です。
かき氷は、黒蜜が看板商品です。一番簡単なように見えて難しい。あまり蜜を固くしてしまうと食べにくいので、微妙な温度加減が必要です。これを煮詰めていくと黒飴になります。かき氷に何回もかけてみて、このぐらいの硬さならいいかなと調節します。氷は、蜜が重いので粗目にしています。(※写真はテイクアウト用の容器で、店内で食べる場合はガラスの容器になります)
お客様からどんな声がありますか
お客様からは「このお店に来てよかったです」「良いお土産ができました」「飴のたまてばこ、宝石箱ですね」とか。リピーターの方も多いです。
奥様と2人で見えて、必ず3杯かき氷を召し上がるお客様もいらっしゃいます。2杯まではありますが、3杯とは!!と思って伺いましたら、鉄鋼関連の仕事をされているとのこと。真っ赤になる鉄の炉を止めずに動かすようで、死に物狂いの暑さですと。それで、夏に菊水のかき氷を食べて、仕事をしながら、思い浮かべて耐えるのだそうです。
ほんとにいろいろなお客様がいらして、「毎日がご縁」「毎日がものがたり」です。
約20年ぶりに復活した長九郎餅
最近、新しいお菓子を復活させたと聞きました
実は、最近、父親が作っていた「長九郎餅」というお菓子を約20年ぶりに復活させました。きな粉をヨモギ餅で包んだお菓子なんですけど、手間がかかるので作るのを止めていたんです。
飴だけでもすごく忙しいんですけど、お客さんから「お父ちゃんが作った長九郎餅を食べてみたいな」というお声があり、「じゃあ、やってみようかな。父親の頃のれんも大切にしてあるし」と思って。
新たに取り組むなら、ハイカラな新製品を出すより、伝統のある地元のものがいいかなと思ったんですね。
復活後のお客様のお声は?
長九郎餅の販売を始めて一週間ぐらい過ぎた頃のことでした。白いハンカチを手に、泣きながら入ってくるお客さんがいたんです。どうしたんだろうと思って話を伺いましたら、体調を崩したお母さんが長九郎餅が復活したという新聞記事を見ながら、「母ちゃんが元気になったら菊水の長九郎餅を食べたいから、買いに連れて行ってほしい」と言ったそうです。
ところが、その一週間後にお母さまは他界されたそう。「今晩がお通夜だから、お母さんにあげたい」ということで、うちの長九郎餅を買いに来てくださったのです。
実は、販売を始めてすぐに新聞に掲載されたんですよ。私がうまく作れるか、お父ちゃんの味がうまく出せるかなーと思っていた時に、もう新聞に載ってしまったんです。掲載されてから1週間後に先ほどのお客様が来店しました。「長九郎餅を始めて良かった。地元の方々に本当に愛されている商品だな。」と心からそう思いました。
販売後にお手紙をくださったお客様もおります。
お客様や地域に愛されるお店ですね
私は商売人というかこの店でずっと育ったので、「ああいう風にしたら売れるかなー」とか考えるんですけど、私のパートナーは「利潤を追求しない」「自分に納得する仕事をしたい」という人なので、商品を積極的に売り込んでいくというより、来ていただけるお客様1人1人に誠心誠意の対応をしてきました。
今となると、それがかえって良かったのかなと思います。儲かってはいないけど、こうやってたくさんの皆様とのご縁もいただいて、このやり方で良かったんだなと。それで今日があるんだなと思います。
長九郎餅を皆様にお届けしたい
今後の展望を教えてください
うちに犬がいたんです。名前は長九郎(笑)
看板犬と長九郎餅を販売していきたいと思い、天国へ応援要請をかけ、名刺を作りました。
地域にとって伝統的な長九郎餅をお伝えし、しっかり製造していきたいと存じます。
インタビューで伺った日はとても暑く、朝から「飴やのかき氷」を食べに次々とお客さんがいらしていました。初めてお会いしたのに、とても温かく迎えて下さり、荻田さんのお人柄が「飴元 菊水」さんが愛されるお店になっている理由だと感じました。おばあちゃんちに行ったような、ホッとするステキなお店で、心温まりました。
■ 会社・店舗案内
飴元 菊水
創業80年の老舗の飴屋。手作りの飴を一粒一角一片、心を込めて作っています。
〒410-3514 静岡県賀茂郡西伊豆町仁科802-4
0558-52-0044