今回は、燕舎の勝野 美葉子 (かつの みよこ) さんにお話を伺いました。
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はじめに
2022年11月に新しい本堂の落成を行った西念寺さん。そのロゴやホームページのデザインを手掛けているのが修善寺の温泉場に店舗を構える燕舎さんです。デザインを通じた地域振興を掲げる燕舎さんの仕事について、今回の西念寺さんへの支援事業を中心に燕舎のオーナーであるデザイナーの勝野 美葉子(かつの みよこ)さんにお話を伺いました。【前編】
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お寺のデザイン
お寺にロゴマークというものがあるのですね。
そうなんです。お寺さんには家紋のような伝統的な紋が昔からあるんだろうな、と思いますよね。それがお話を伺ったところ宗派ごとの紋はあるんですが、いわゆるロゴマークというか家紋的な”寺紋(じもん)”というものは、どこかのタイミングで誰かが作るぞ!とならない限り無いんだそうです。
ということで、ロゴマークの作成という依頼をいただいたのですが、もともと寺紋が無いということ、宗派の紋と並べて使うという展開も想定されているということで、デザインの方向性としては家紋スタイルでいきましょう、という提案させていただきました。
ロゴマークではどのようなものを表現されているのでしょうか?
ご覧の通り、桜の花をモチーフとしたデザインになっています。なぜ桜を選んだかというと、西念寺さんの境内に大きなしだれ桜があって、その桜の花見会があったりとか、お寺のシンボル的な存在となっているからなんです。
西念寺さんからは「繋いでいく」というイメージを込めたいというご要望をいただきました。そこで、桜の花の輪郭が全部一本の線でつながっていて、御縁とか結びとか、あるいは過去から未来、大人から子どもといったものを表現しています。皆さまから私たちに繋がっていく、というのは阿弥陀様とか浄土真宗の考え方でもあるんです。
よく見ていただくと、花の中央、おしべの部分がロウソクになっています。このロウソクも阿弥陀様の教えを表していて「自分たちの道を明るく照らしてくれる」ということなんです。いくつか候補のモチーフを挙げていただいた中にロウソクというものがあったので、それを桜と組み合わせました。
今回のデザインでは”家紋帳”というものも参考にしました。私の母が日本刺繍の作家をしていて、着物への刺繍などもする関係でこのような資料が私の家には沢山あるんです。家紋帳を見ると桜の紋って本当にたくさんあるんですよね。今回は一番ベーシックな桜の紋のスタイルを参考にしています。
どのようなきっかけで支援をされることになったのでしょう?
地元で刊行されている伊豆日日新聞に「我がリスペクト」という、地域への思いを持った人たちを数珠つなぎに紹介していくコラムがあるんです。そこで私を紹介していただいた事があったのですが、西念寺の副住職である植田誓子(うえだ せいこ)さんがその記事を見て、「こんな人が修善寺にいるんだな」と思って声を掛けてくださったのがきっかけです。
私は学生時代に地元を離れていたのですが、誓子さん自身もしばらくこの土地を離れて京都にいらっしゃったそうで、地元の伊豆に戻ってきて地域の事に取り組むことになり、一緒に頑張っていけるお友達が欲しかったそうです(笑)。知らないうちにお店にも来ていただいていたりとか、ホームページなども読み込んでくださっていて、「燕舎のデザイン」という面にも共感してくださった上でご依頼をいただきました。
伴走を通じたデザイン
西念寺さんとはどのようにお話を進めてきたのでしょうか?
打ち合わせという意味では誓子さんと私の二人で調整を進めてきたのですが、実際には誓子さんから門徒(檀家)さん、ご住職、ご家族という関係者にお話をしてくださっていて、皆さんの思いがデザインに込められています。
お寺には法要やお墓参りの時にしか人が集まらなくなっている時代なのですが、元々は地域の人たちが日頃から集まるコミュニティの場だった。そういうものを、今の時代だからこそもう一度力を入れていきたい、というのが皆さんの思いなんです。そこで、今の人達にわかりやすいように、込めた思いが伝わるようなシンボルが欲しいということでお話をいただくことになりました。
そのような思いを共有させていただく所から本当に色々な企画を考えている中で、例えばホームページも整備した方がいいかなとか、お寺さんのことを伝える案内ツールとかも欲しいなあ、というように話が具体化していきました。
■ 会社・店舗案内
燕舎
〒410-2416 静岡県伊豆市修善寺825-2
https://tsubame-sha.net/