今回は、株式会社クレマコーポレーションの渡邉 貴裕 (わたなべ たかひろ) さんにお話を伺いました。
「つる性植物の女王」とも呼ばれ、紫や白、赤、ピンクなど様々な品種を楽しめ園芸ファンからも根強い人気がある「クレマチス」。
今回は、三島駅から車で10分くらいのところでクレマチスなどを育てている株式会社クレマコーポレーションの代表取締役・渡邉 貴裕さんに、クレマチスの生産のこだわりや想いなどのお話を伺いました。
全国シェア6割を占めるクレマチスの生産
取扱商品を教えてください
クレマチスとクリスマスローズというお花を取り扱っています。生産規模は3.3ヘクタール。東京ドームの3/4ぐらいの広さですね。広い敷地にハウスを設置し、クレマチスは「駿河のクレマチス」の名前でブランド化して約600品種を育てています。全国各地の販売店に出荷するほか、自社のオンラインショップでも販売しています。
実は、クレマチスの苗をメインに生産している会社は国内にたぶん10社もないくらいなんです。うちが全国シェアの約6割を占めていて、あとは岩手県や千葉県、岐阜県などで作ってますね。
あえて人が作らないお花にチャレンジ!
苗の生産会社が国内に10社もないのは、作る技術が難しいからでしょうか?
作るのも難しいですし、挿し木というやり方で増やすんですけど、花がついた苗になるまで3年ぐらいかかって、なかなか新規でやろうと思っても・・・。鉢花を作っている方はいっぱいいるんですけど、挿し木をして苗の状態で販売してというと少ないです。たまに苗の生産をしてみようという方がいて、最初の10品種くらいはうまくいくようですが、だんだん「この品種ないの?あの品種ないの?」という問い合わせに対応できなくなるようです。
うちはたくさんの品種を扱っているので、おかげさまでクレマチスを買おうと思った時に一番最初に思い浮かんでもらえる会社になっています。
そもそもクレマチスの生産を始めたきっかけは?
僕は2代目なんです。父が約40年前に始めたんですけど、会社を作る前に、東京に花栽培の修行に行って、最初はいろんな花を試したようです。当時、クレマチスは生産が難しく、花は良いんだけど、なかなか作る人がいなくて・・・。挿し木から出荷まで2~3年かかってしまうのと、あと、つるが伸びて花が咲くので、他の花より手間がかかるんです。繁殖技術も十分でなかったので量産も難しかったようですね。なので、大半の人は始めてすぐにある程度のお金になるお花を選んだ。でも、父はあえて他の人がやらないものに取り組んでいました。
地下水で育てた丈夫な苗!
生産のこだわりを教えてください
富士山の麓で、地下210mから汲み上げた豊富な雪解け水をふんだんに使って、丈夫な苗に育てています。
実は、敷地内に父が約40年前に掘った井戸があるんです。うちは祖父がヤマトイモや芝生を作っていたんですね。野菜や芝生だと水はいらないので、井戸はなかったんですけど、父の代になり花の生産をするのに水が必要になったんです。最初は、井戸を掘って20、30mぐらいで水脈に当たったんだけど、もっと掘らないと水が枯れてしまうかもしれないということで210m(笑)。
当時、熱海の温泉を掘るボーリングの業者さんに掘ってもらったみたいで、40年前で1m5万円だったらしいです。210mだと1,000万円を超えますね。今の価値だと3,000万円とかになっちゃうんじゃないですかね(笑)。
「駿河のクレマチス」の特徴は?
「暑さに強い」というのが特徴です。クレマチスは、もともと寒さには強いんですが、暑さに弱いものもあるんですね。うちは、クレマチスをハウスで育てているんですけど、夏は外の気温が35、36度ぐらいになるので、ハウス内は40度以上になるんですよ。
その環境で生き残っている品種を増やしてるので、うちで出荷しているものはだいたい暑さには大丈夫ですね。出荷まで長いものは3年かかるので大変なんですけど、綺麗にお嫁に行ってくれると嬉しいです(笑)
40度以上でも生き残るなんて、たくましいですね!「がんばれ!」って応援したくなります。
なりますよね!(笑)
ハウスに車で通って生産!
広大な敷地でどうやって生産しているのでしょうか?
フルタイム5名、パートタイム15名、家族5名で生産しています。ハウスごとに、例えば、「夏に水をあまり必要としないグループ」など特性が違うクレマチスを分けて並べ、担当を決めて管理しています。僕が担当のハウスもあるんです。
敷地が広いので、ハウスまでは車で行ってますね。お取引先さんから出荷を依頼され、「5ポット10ポットだったらすぐ準備できるでしょ」と思われがちなんですけど、いろんなハウスに品種が散らばっているので、車で周って集めてという感じです(笑)
|水やりとか普段のお仕事は?
水はハウス内に自動で植物の上からシャワーみたいなのが出るので、それで水やりをしています。あとは季節により、肥料や草取り、増殖の時の挿し木など。出荷をする際にはつるを綺麗に巻いてラベルを貼ったりなどですね。
こういった仕事は従業員の皆さんにお願いしていて、僕は、全体的なことや、取引先との連絡、納品書を作ったりなどが中心です。取引先から「大輪のクレマチスのセット」という注文が入ったら、どれにしようかなーとか考えたりもします。
クレマチスの苗の生産が全国シェア6割というのはすごいですね。クレマチスは私が大好きなお花の1つで昨年、初めて苗を買って育ててみたので、お店で苗が販売される前の生産のお話は興味深かったです。人気の品種なども気になります!
(後編では、生産に当たってのご苦労や人気の品種、生産の想いなどをご紹介します)
■ 会社・店舗案内
株式会社クレマコーポレーション
※全国の販売店https://www.clematis.co.jp/clematis/#shoplist ※オンラインショップhttps://www.sky-fish.net/shopping/clematis/
静岡県駿東郡長泉町東野八分平270-17
https://www.clematis.co.jp/