今回は、株式会社KINEYAの山下 学 (やました まなぶ) さんにお話を伺いました。
■ プロフィール
山下 学 (やました まなぶ) さん
二級建築士。地震災害建築物応急危険度判定士。 住宅・店舗の設計施工、増改築・リノベーション工事、古民家再生、インテリアデザイン、家具・照明デザイン製作、かんな屑クラフト製作・販売。 大学(造形建築学)卒業後、アトリエ系設計事務所の勤務を経て、アイアンクラフト製作等に従事。その後、父親の工務店で、中伊豆を中心に新築から古民家のリノベーションまで幅広い分野で活躍中。
インタビューの場所は、お施主様のご協力をいただき、リノベーションを手掛ける古民家の一室。山下さんが棟梁として指揮を執る現場です。玄関先では、ベテランの左官職人さんがきれいに壁を仕上げていました。
今回は、住宅や店舗の設計から施工まで一貫して行う工務店「株式会社KINEYA」山下さんから”伊豆の木で建てる “家づくりの想い”をお聞きしました。
KINEYAの由来
企業名の「KINEYA」の由来はなんでしょうか。
祖父母の時代に「キネヤ商店」として商いをしていました。店は、川のほとりで、水車を回して杵を突いていた場所。その「杵つき場」から「キネヤ」という屋号を取ったと聞いています。
父親の代から建築を手掛けるようになり、プランニングも設計も大工もするという意味を込めて「キネヤ企画」とし、現在は株式会社KINEYAに名称変更しています。
新築も、リノベーションも
どのような建築に関わることが多いですか
新築に限らず、増改築やリノベーションなど幅広く手掛けさせて頂いています。この1年ぐらいは新築よりも、リノベーションなどの改修物件が多いですね。
注文住宅だけでなく、古民家のパン屋さんやエステサロン、創作料理屋さんなど、店舗様のご依頼もあり、設計施工させて頂きました。
現在は、「土間ん中プロジェクト」と題して、京都の町屋のフルリノベーションも進行中で、1月末にはオープンハウスも開催予定です。
http://domannakapj.wixsite.com/openhouse
ご依頼のあるお客さんはどのような方ですか
静岡県東部を中心に、修善寺や中伊豆のお施主様が多いです。大変ありがたいことに、伊豆出身の友人や知り合いを通じて「東京で店を開きたい」といった伊豆以外の地域からも声をかけてもらっています。
「山下さんにつくってほしい」と人づてに言われることも多いですね。ハウスメーカーさんや工務店さんを回って、最後に弊社を選んでくれることもあります。
あとは、伊豆に移り住んでくる、移住者の新築や改修案件。最近では、伊豆に移り住んだ地域おこし協力隊の方の、家づくりも手がけさせて頂きました。
新築とリノベーション、どちらかに集中したい、というのはありますか
贅沢ですけど、どちらも手掛けたいですね(笑)それぞれ醍醐味が違います。
新築は、ゼロからお施主様の生活を想像しながらデザインしていく。何もない状態から、設計図をつくり、建物というカタチができるのはとても興味深いですね。
一方で、リノベーションは、2つとして同じ現場がない。
日に日に状況が変わっていく。その現場の状況に応じて、どう納めたら良いか、どう補強すべきかなどを瞬時に判断し、リノベーションのカタチを考えていくことに非常にやりがいを感じます。
解体して露わになった先人達の残した技術にも震えるときがありますね。
古民家のリノベーション
リノベーションにも相当やりがいを持たれているんですね。
新築はまっさらな状態からつくれる魅力はありますが、既存の建物を残す建築にも大きな魅力があります。
特に古民家は、立派な材料を使っていたり、今では手に入りにくい材料が使われていることがあります。新しい材料に取り換えるのは簡単ですが、昔の材料をどう残していくか、古いものをどうよく見せるかなど、もとの建物の「何をどう残すか」を考えていくことに醍醐味がありますね。
何を残すか基準のようなものはありますか
もちろん、材料の強度や構造的に満足できているのが条件ですが、感覚的な部分も多い。言葉ではなかなか表現するのは難しいですね(笑)
自分も今、築100年ぐらいの古民家に住んでいますが、生活しながら日々実験しています。例えば、照明にしても、天井からの高さを変えたり、あえて暗い照明をつけたり、明るい照明をつけたり。自分の家を実験場にしながら、現場で実践できるヒントをつかんでいます。
お施主様との調整もありますが、前提として、信頼関係のもと「任されている」からこそ「何をどう残すか」が決められるんだと思います。
あとは、同じ建築士として父の経験から教えてもらうこともあります。古いものを残したいと思っても、耐震バランスが悪かったり、構造的に不備がないか確認しながら、一部を解体したり、壁を作って補強することもあります。建物の耐震だけでなく、住む人の生活や地域とのつながりも含めて、全体を見ながらプランニングしていきます。
住む人の生活もプランニング
プランニングとはどんなことですか。
自分が思うプランニングとは、単に「机上で図面を引くこと」や「建物をデザインすること」ではないと思っています。
「お施主様が建てた家にどう住まうか」を考えて、住む人たちの生活や地域とのつながりなど、ソフト面も意識します。例えば、日陰の具合、窓の高さや隣家との距離感など、すべてを含めてプランニングとして考えます。
特に田舎は、人と人とのつながりが濃い。お施主様の要望を聞きながら、地域の人たちとの関わりを持ちやすくするか、ちょっと距離をとるような設計にするのか、地域との距離感を考えるのも大事なことです。
山下さんの「プランニング」という言葉には、建物に住む人の生活も想像して、デザインするという意味が込められているんですね。
(後編では、山下さんの伊豆の木を使い続ける、地産地消の家づくりの想いをご紹介します)
■ 会社・店舗案内
株式会社KINEYA
https://kineya544.jimdo.com/