今回は、株式会社KINEYAの山下 学 (やました まなぶ) さんにお話を伺いました。
■ プロフィール
山下 学 (やました まなぶ) さん
二級建築士。地震災害建築物応急危険度判定士。 住宅・店舗の設計施工、増改築・リノベーション工事、古民家再生、インテリアデザイン、家具・照明デザイン製作、かんな屑クラフト製作・販売。 大学(造形建築学)卒業後、アトリエ系設計事務所の勤務を経て、アイアンクラフト製作等に従事。その後、父親の工務店で、中伊豆を中心に新築から古民家のリノベーションまで幅広い分野で活躍中。
前回に続き、住宅や店舗の設計から施工まで一貫して行う工務店「株式会社KINEYA」山下さんへのインタビュー。古民家をリノベーションして自宅にされるなど、古い建物のリノベーションにもこだわりを持つ山下さん。後編では、伊豆の木でつくる、地産地消の家づくりの想いをお聞きしました。
【前編】はこちらから
伊豆の木でつくる、地産地消の家づくり -「株式会社KINEYA」山下 学さん【前編】
Contents
お客さんの想いを聞く
プランニングでは、どのようなことに気をつけていますか
時間をかけて、お施主様の声をよく聞くことです。
単に間取りの希望を聞くのではなく、趣味や好きな音楽、竣工後も最大限にお家時間を楽しんで頂ける生活を、家族の皆で共有できるようにじっくり聞いていきます。実際に、自分の仕事の時間の中で一番、時間をかけているかもしれません。
お客さんから聞くときに何か工夫はありますか
お施主様からアイデアを出してもらえるように、話の引き出しを多く持つようにしています。その引き出しの知識を増やすために、日ごろからいろいろなものに興味を持つようにしていますね。
ハウスメーカーさんのように、決められた規格品を販売するのとは違います。お施主様も十人十色。家族の関わり方や暮らし方によって、多種多様なプランがあって然るべきですし、2つとして同じ家づくりは無いと思っています。そのためには、たくさんのお話を聞いて、アイデアを出し合い、その想いをカタチ(建物)にすることが大事だと思っています。
地産地消の家づくり
ハウスメーカーとの違いはどんなところですか
ハウスメーカーさんには、パネルの壁「面」で建物を支える工法があります。その工法で使う材料は、良くも悪くも工場で均一に加工されたものです。その工法に対して、自分たちは伝統工法から派生した在来工法。
墨付け・手刻みという手法で癖のある材料を1本1本加工し、土台に柱を立て、筋交いを使って緊結、梁や屋根をかけて行きます。基本は「線」で支えるイメージです。
材料は、地元の山で育った木々。近くの山で取れた材料で家をたてる、という「地産地消」を大事にしています。建物で使う木は、我々職人が自分たちの手で触って「この脂分の多いものは土台用に使う」といった感じで適材適所に配置して使います。
前者の工業製品と大きく違うのは、様々な職人が一丸となり創り上げる「手の仕事」なんだと思います。
家づくりでも地産地消という考え方があるんですね
建物を建てる場所は、その地域によって気温も湿度も環境が違います。
その土地に合った建物を建てるには、なるべく近くの山で育った木を使うほうがいいんです。先ほどお話した、京都の物件も私が設計を担い、京都の木を使って地元の工務店さんに施工してもらいました。
「地域の山で採れた木を使い、地元の製材屋さんの手で加工し、地元の職人が建てる。そして、住む人が、地元の木でつくられた家を育てる」
手と手が繋がり、地域が元気になる。そんな循環ができたらよいと思っています。
林業も衰退の一途をたどっており、山が荒れることが問題になっています。
自分たちができることは、小さいことかもしれませんが、山や地域の産業を守ることに貢献できたらと思います。
家づくりへのこだわり
家づくりのこだわりは何ですか
お施主様と一緒に家づくりを楽しむことです。
家づくりはお施主様との共同プロジェクト。建売のようなAプラン、Bプランといった決まったものを販売するものではなくフルオーダーメイド。
手書きのスケッチを繰り返し、何百種類と練り上げられるなかで、依頼してくださったお施主様ご家族だけのオリジナルの空間を作り上げます。ご予算に擦り合わせていくためのつらい業務もありますが、その苦楽もざっくばらんに一緒に楽しめるお施主様とは、よい家づくりができると思っています。
今後どんなことをしていきたいですか
父の思いを承継しながら、次世代の若い人たちに「自分たちがしてきたこと」を引き継ぎたいと思います。
今回施工させて頂いたこの古民家にしても、次の世代の人たちが「前に改修した人たちはこうやって改修したんだ、こんな空間をつくったんだ」と思いながら、引き継いでくれたらうれしいですね。そのためには、次の世代に引き継がれるだけの構造やカタチをつくっておくことが大事です。
いま、職場に若い人が一緒に働いているんですか
絶賛募集中です(笑)。
条件は、在来工法の建築、手の仕事に関わりたいことは前提ですが、いろんなことに興味があって、いろんな視点を持っている人。仕事以外のことにも興味を持って、自分のアイデアにしていくようなハングリー精神が強いといいですね。
実は私も若いときに、先輩から「建築をするなら、料理をやってみなさい、美術館に行ってみなさい、本を読みなさい」と教わってきました。
時代とともに個人で頑張っている建築屋さんが少なくなっています。自分たちの仕事が、大手ハウスメーカーさんと何が違うのか、信念を持ってしっかり説明できるような中身が濃い仕事を残していくことが大切です。
一緒に共存できる、一緒に戦える仲間たちが増えてくれたらうれしいですね。
技術の伝承だけでなく、地元の山や木を大事にする地産地消の考え方も含めて引き継いでいけたらと、思っています。
おわり
■ 会社・店舗案内
株式会社KINEYA
https://kineya544.jimdo.com/