Contents
ゴルフ好きな人々
一緒に仕事をしている方と話している中で、ふとしたきっかけで趣味の話に話題が及ぶことがある。
趣味の話を聞くと、その方の別の側面が見えたようで、何だか妙に親近感がわく。
私が中年街道を突き進んでいる中で、その趣味の話に至った際に一番多く聞く趣味は、「ゴルフ」である。「ゴルフ趣味」の方があまりに身近すぎて、最近では日焼けの具合やファッションなどでその人がゴルフをやっているのか、やっていないのか何となくわかるようになってきたほどだ。
何となくゴルフが好きそうな方にゴルフの話題を振ると大抵のゴルフ好きはとてもうれしそうに会話をしてくれるのだ。
松山選手が優勝しましたね、とか、渋野選手はかわいいですね、などプロ選手の話題に始まり、よく焼けた肌に対し、「ゴルフ焼けですか?」と声をかけるだけでも何だかとてもうれしそうだ。
そして、彼らは必ずこう聞いてくる。「ゴルフやるんですか?」
私が、「いや、やらないんですけどね」
と答えると、不信感をあらわにした表情を見せる。
ちっ、思わせぶりな態度をとりやがって、と。
そうなると私は取り繕うように、「いや、はじめようと思っていましてね」
とごまかしを言う。すると、
「はじめるならいろいろと教えてあげるよ」と、彼らは親切心を取り戻し、機嫌を直してくれるのだ。
小さな頃、親戚の叔父さんが昼下がりの日曜日に延々とゴルフの試合をテレビで見ているのを眺め、「何で人の家で偉そうに遠慮もなくこんな面倒なものを延々と見ているんだ」と忌々しく思ったものだ。
でもおじさんというものはゴルフが好きなんだし、ゴルフというものはおじさんに支えられてこそ存在する競技なのだと割り切っていた。そして、その割り切りはそう大きくは外れてはいないのだと思う。しかし、そのようにまとめてしまうことで、いくらかの人々からは反発されるはずだ。
と、長々と言い訳のような前置きをしてみたが、先日、とうとう私もゴルフをやってみることにした。理由はいろいろとあるが、一番の決め手は、一緒に働いているかっこいい女性との会話だ。
「何か趣味を持った方がいいと思ってゴルフをはじめてみたの。ただただ働いていると何だか虚しく感じちゃって。少し贅沢な趣味で気分転換でもしないとね。それに趣味がないと延々と働いてしまうから」
なるほど、ゴルフというのは「少し贅沢な趣味」なのだ。この表現が実に魅力的に響いた。
それに、「趣味がないと延々と働いてしまう」というところにも激しい共感を覚えた。
その会話の中では、「そうですね」とか「私も何か見つけないとですね」など当たり障りのない相槌を打っていたが、内心では「ゴルフをはじめる」という選択肢が姿を現していた。そして、むくむくとその存在感は大きくなっていき、帰る時には「次の休みの日に試しに打ちっぱなしにでも行ってみようかしら」となっていたのである。
コガワグリーンゴルフ
「伊豆に住んでいるのにゴルフをしないなんてもったいない」とか、
「10分で行ける距離に何個ゴルフ場があるんだ!」などとゴルフ好きの人々から羨望のまなざしと、
「そんな恵まれた環境にいるのに何でゴルフをやらないんだ」とか、
「ゴルフもやらないくせに伊豆の山奥に住んで、東京まで通っているなんて正気の沙汰じゃない」という軽蔑のまなざしを浴びてきた。
「ゴルフでもやってみようか」という思いつきは、翌日、目が覚めてもそこにあった。
子どもたちを学校へ送ると、我が家から車で10分程度の距離にあるコガワグリーンゴルフへ行ってみた。
かごプリカというプリペイドカードのシステムがあって、
3かご 1,480円(1球あたり9.86円)
7かご 2,960円(1球あたり8.45円)
15かご 5,920円(1球あたり7.9円)
となっている。
時間制のコースもあった。
2時間
大人 1,300円
レディース 1,150円
高校生 1,150円
小中学生 1,050円
かごプリカの7かごを買ってみた。
青々と茂った谷のような芝生には、30、50、70、100…と点数のようなものが提示されているが、単位は「点」ではなく、「ヤード」らしい。
練習場は平日の朝でも結構人がいた。
「S」とか「P」とか「6」あるいは「9」と書いてあるアイアンと呼ばれるクラブを振り回してみたが、よくて70点(ヤード)、平均は40点(ヤード)と言ったところだろうか。
実は私はなかなか運動神経がわるいのだ。
そして、極度の緊張しいである。視線があると思うように体が動かないのだ。
ゴルフとは、何人かのグループでひとり1打ずつ打ちあって、みんなでコースをめぐる旅であるそうだ。それは18ホール続くという。
噂によるとあまりに進みが遅いと後ろからせっつかれる場合もあるらしい。
なかなかのプレッシャーゲームである。
ひとりで青々とした芝生に鉄の棒を振り回してボールを打ち込むのはなかなか興味深い行為であるものの、その練習の先には壮大なプレッシャーゲームが待ち受けているのだ。
そのプレッシャーゲームを楽しめるかどうかが私がゴルフをはじめる分岐点になるような気がしている。
こう見えて私は気い遣いい(きいつかいい)なのだ。
とりあえず打ちっぱなし練習場は楽しかったので、しばらく打ちっぱなし練習場をめぐる旅をしたいと思う。
伊豆のゴルフ事情に興味がある方がいらっしゃったら、次回をお楽しみに!