今回は、万大醸造の伊奈 静夫 さんにお話を伺いました。
万代醸造は伊豆半島唯一の酒蔵の文字に魅かれていました。日本酒というと雪国のイメージが強いですが、北海道洞爺湖サミットで乾杯用に用いられたのは静岡の酒でした。静岡は富士山や南アルプスに囲まれた名水の宝庫です。
水どころでもある伊豆は、大昔から酒造りが盛んな土地柄でした。昭和の中頃には数十件あった酒蔵も、時代の変化もあり、現在では万大醸造のみとなっています。伊豆の酒造りを守る万代醸造にお話を伺う機会を得たので紹介したいと思います。
万大醸造の酒造り
万代醸造は、現社長である佐藤智昭さん、杜氏の伊奈静夫さんに加えて、蔵人の4名で酒造りを行っています。実り秋を迎えた11月は、新米の仕込みや瓶詰作業を行う時期でした。万代醸造では、昔ながらの寒造りを行っています。寒造りとは、12月~翌年2月頃までの寒い季節に酒造りを行うことです。この季節は、寒いことで雑菌が繁殖しにくい時期であるため、酒造りに適していると言われています。
江戸時代に寒造りが確立されたと言われ、計器類が無いため、杜氏をはじめとする蔵人は、発酵状態によって変わる香りや味、肌に感じる温度変化などを頼りに、とぎすまされた感覚によって把握し、複雑な酒造りに対応してきたようです。
寒造りの時期を迎え、杜氏の伊奈さんにお話しを伺った。
万大醸造の伝統を守る杜氏の伊奈さん
伊奈さんは、酒の分かる人に飲んでもらいたいと語り、日々、酒造りと向き合っていました。万代醸造の技術を守る杜氏の伊奈さんは、東洋醸造・旭化成酒類事業部の出身者でした。東洋醸造・旭化成酒類事業部の解散後、万代醸造の杜氏として伊豆唯一の技術を蔵人の4人とともに守っていました。
杜氏をはじめとする蔵人は、発酵1ケ月、今年の米の具合で調整することで酒造りに対応していきます。寒造りの本格シーズに向けて、伊奈さんの感覚がとぎすまされているように感じました。職人の技術で名酒が生まれるわけですね。
万大醸造の挑戦が始まる
江戸時代に寒造りが確立されました。この頃、戦国三英傑の織田信長、豊臣秀吉、徳川家康にも贈られ、江戸時代中期に製造が途絶えた「幻の名酒」がありました。この名酒を復活させる計画が、静岡県の伊豆半島で進められています。韮山地域(現伊豆の国市)で代官を代々務めた江川家で造られていた「江川酒(えがわしゅ)」です。
2021年5月に重要文化財江川邸(伊豆の国市)で確認された克明な製法書を基に、来年初めから地域の醸造所が仕込みを始めるようです。伊奈さんが長年で培った杜氏の技術が発揮することになりそうです。
編集後記
心に響くキャプテン翼の名言ランキングにカールハインツ・シュナイダー君による「サッカーは強いものが勝つんじゃない。勝った者が強いんだ!!」という言葉を思い出しました。「勝った者が強い」という信条は、1974年に「皇帝」の異名を持つドイツのサッカー選手、フランツ・ベッケンバウアーが口にしたものでもあります。
万代醸造は、伊豆半島唯一の酒蔵として生き残りました。
キャプテン翼は、静岡県の舞台から始まり、主人公は世界に飛び立ちました。伊豆半島唯一の酒蔵は、世界に飛び立つ力を秘めていると感じました。
■ 会社・店舗案内
万大醸造
伊豆半島唯一の酒蔵 万大醸造合資会社。日本酒、焼酎、リキュールを醸造しています。
静岡県伊豆市年川34
https://izu-bandai.com/
0558-72-0050