伊豆にある滝…といえば浄蓮の滝や、河津七滝といった観光スポットがありますね。これらは幹線道路からのアクセスの良さであったり、伊豆ジオパークの一部として認定されたジオサイトとしてのブランド力もあります。
そんな中、滝そのものとしては主役級の規模を誇りながら比較的ひっそりとしているのが中伊豆にある「萬城の滝」。伊豆への小旅行の帰りに”ちょっと”立ち寄ろうと思い立ったものの、軽い気持ちとは裏腹に全く想定外の険しい道のりを乗り越えて取材を行って参りました。
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滝への道のり
ある夏のよく晴れた日。家族で充実した休日を過ごそうと爬虫類の楽園、iZooを堪能。さらに同じチケットで入れるという姉妹施設のKawaZooにも立ち寄りカエルとの非日常なひとときを過ごし、付近の茶屋でわさび丼と猪汁も満喫。
存分に観光気分を味わったところで素直に帰れば良いものを、まだ日も高いし、もうひとスポット行けるだろうと出てきた欲を抑えきれない私。思いを巡らせてピンときたのが「萬城の滝」。
浄蓮の滝や旭滝は大人になってからも訪れた記憶はありますが、萬城の滝はといえば子供の頃行ったことがあるようなないような…ひょっとしたら過去の秘められた記憶と再会できるかも…などという思いを抱いていたか否かはさておき、ナビの目的地に入力。
KawaZooがある河津七滝の大滝付近を出発し、ほどなくして河津ループ橋へ。名曲の鼻歌とともに天城越えを果たし(トンネルですが)、天城山中のワインディングロードをくねくね北上。浄蓮の滝を横目にしばらく走ったところで”右折せよ”とのナビからの指示。
案外パッとしない交差点を曲がるのだな…と思ったのも、今となれば正しい違和感でした。
山に向かって続く道。標高が上がるに従っていつしか民家は見えなくなり、道幅は狭くなる一方。もはやクルマ同士がすれ違うのも困難な状況に。路面は舗装されているものの両側の木々は鬱蒼と生い茂っており、これはもはや林道。
スライドドアのファミリーカーではなく、オフロードバイクで来たら楽しかったのに…。
どれくらい時間が経っただろうか(多分そんなには経っていない)。殺風景な道路の脇にぽつんと「国士峠」という看板があったのが見えた。
そうか、自分はいま峠を超えたのだな。
道は次第に下り坂が多くなってくる。

ふとナビを見ると目的地まで6キロほど。高速道路ならあっという間に通りすぎてしまう距離だろう。一般道だってお気に入りの曲を聞いていたらそこそこすぐ到着してしまうに違いない。しかし目的地までの距離はなかなか減らない。まるで健康診断前の駆け込みダイエットである。
こんな道を通らなければ辿り着けないなんてやはりおかしい、ナビへの入力を間違えたか?などと悔い改めを始めかけたころ、ようやくわずかな光明が。
そう、かの有名な「筏場のわさび田」(いかだば、と読む)に出くわしたのです。存在は知っていましたが、このように砂漠の中にオアシスを見つけたかのような形で遭遇するとは思ってもみませんでした。

わさび田の中腹にかけられた橋からの眺めは壮観。上を見ても下を見ても延々と続くわさび田。日本料理には欠かせないワサビですが、このような大規模農園が山の中で人知れず日本の食卓を支えていたのですね。

そんな筏場のわさび田を過ぎた辺りから、それまで完全に消失していた道路のセンターラインも悲願の復活を果たし、民家もちらほら見え始めました。ようやく人里に戻ってくることができ、不安に満ち溢れた峠道エリアは終わりを告げました。
さて、ここまで読んでいただいて、「そんな険しい道を通ってまで行きたくないよ。」と思われた方も多いでしょうが…安心してくだい。
帰路で分かったことですが、実は私が通った南側から北上する道はメジャーな観光ルートではなく、北側の修善寺駅周辺から南下していくのが正解であったようです。さらにその途中には伊豆スカイラインの冷川ICからアクセスする道もあり、なんとまあ整った道路事情であったことか。
滝との対面
決して無駄であったとは信じたくない苦難を乗り越えて、いよいよたどり着いた萬城の滝。そう、この記事は滝の記事。ようやく滝のレポートです。

萬城の滝に続く入口のすぐ脇にはまだ新しめのキャンプ場があり、駐車場もできたばかりのようで看板も大きく、非常に観光客フレンドリーです。滝への入り口も分かりやすく、微塵も迷うことなく滝に向かうことができます。

萬城の滝入口から改段を下っていくと、あっという間に滝がその姿を表します。

特徴的な柱状節理の造形は言うまでもなく、滝の裏側まで緑が生い茂っている点も他ではなかなか見られないのではないでしょうか。
周囲を彩るのは鬱蒼と生い茂る木々や苔、これが神秘的な雰囲気を醸し出しています。昔は滝の裏側にも回り込んで眺められたということで「裏見の滝」とも呼ばれていたそうです。かつては裏側につながっていたであろう朽ち果てた手すり、注意喚起の看板などが今でも見られます。

このように多彩な魅力を有しており、主役級の存在感を放つ萬城の滝ですが、伊豆半島ジオパークのジオサイトには登録されていません。
よく見ると、柱状節理の隙間にはモルタルが充填されており、特に滝の左上の部分はいかにも不自然な人工の造形物があります。これらは崩落を防ぐために施したものであり、自然本来の姿ではなくなってしまったことからジオサイトへの認定がなされなかったのだそうです。

きっと長い年月をかけて崩落を繰り返してきたからこそ今の姿があるのだと思いますが、人が立ち入るようになってしまったからには止むを得ない措置だったのかもしれませんね。
滝から少し下ったところには「萬城広場」があります。こちらも年季の入った柵や長年放置されていると見られる木材(薪?)がいい感じに朽ちかけており、人の気配が無い静けさと相まって幻想的な雰囲気に包まれていました。

わさビジターセンター
怪我の功名とも言える形で筏場のわさび田を訪問した私ですが、もう一箇所、わさびにゆかりのあるスポットに立ち寄りましたので併せて報告いたします。
その名も「わさビジターセンター」。
もちろん、わさびの”び”とビジターセンターの”ビ”がかかっており、タイプミスではありません。
当初訪問の予定は無かったのですが、滝からの帰り道にあったこの施設。何だこれは?と思いながら一旦は通過しつつ、どうしても気になったので引き返して訪問することに。それほどまでに注意を引くこのわさびのキャラクターは「わさびのさびちゃん」というそうです。

恐る恐る入ってみると、とても綺麗な内装。最近できたばかりなのでしょうか。入って正面の目立つ所にはVRゴーグルのアトラクションも設置されており、好奇心が掻き立てられるセンター内。
案内の方に教えていただき、さっそくVRを体験。わさび田を巡る荷運び用のモノレール(みかん畑でもよく見るものです)のバーチャルな乗車体験ができます。一度は乗ってみたいと思ったことがあるのは私だけではないはず…!

その他、わさび田の仕組みやその改良に尽力した偉人である平井熊太郎氏の紹介。世界農業遺産としての認定についてや、美容への効果など、センター内ではわさびに関する幅広い情報が所せましと紹介されていました。
窓口の方にもとても親切に対応していただき、ちびっこ連れでの騒がしい訪問ながら気が済むまでゆっくり楽しむことができました。

さいごに
萬城の滝エリアへのアクセスについては、わさビジターセンターの案内の方とのやり取りでも、
案)「筏場のワサビ田というのがこの先にあって…」
私)「あ、そっちから来ました…」
とか
案)「他にも、この先には滝もあるんですよ〜」
私)「あ、もう行ってきました…」
など、地元の方からの目線でも南側からのアプローチは想定外だったようです。
帰宅後に地図で道路の様子を見返してみても、修善寺からのルートが九州ラーメンのストレート麺なら、私が通った道は間違いなく喜多方ラーメンのちぢれ麺。行き当たりばったりの旅も楽しいですが、山に入る際には事前の計画を念入りにしておくことを強くお勧めします!
また、全くの偶然ながら、萬城の滝訪問からほどなくして、自動更新設定にしている仕事用パソコンの壁紙がアイスランドの「スヴァルティフォス」という滝の写真に切り替わりました。恐らく柱状節理の美しい滝ということなのでしょう。しかし、これが世界的な観光名所になるのであれば、萬城の滝の方が…と思わずにはいられません。
一方で、地元では年に一度「萬城の滝まつり」というお祭りが開かれているそうですし、滝周辺にはライトアップのための照明も設置されていました。大規模な観光地化はされておらずとも、地域からは愛され続けている滝なのだろうなと感じ取ることができる、そんな萬城の滝訪問となりました。
萬城の滝
〒410-2515静岡県伊豆市地蔵堂776-1
https://kanko.city.izu.shizuoka.jp/sightseeing/banjonotaki/